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下校時、慶介とそのとりまきたちの後ろを数歩遅れて歩く俺に、慶介が振り返って怒鳴った。
「おい、草司(そうし)! もっと早く歩けよ!」
「む、無理……」
「ったく、お前は昔からトロいよな」
呆れたように慶介が溜め息を吐くと周りの奴らが同調するように笑った。
いやいや! これだけの荷物を持ってれば誰でも遅くなるわ!
俺は心の中で叫んだ。
俺の背中や腕には、慶介の荷物はもちろん、奴らのとりまきたちの荷物まであるのだ。
慶介は自分の分だけでなく他の奴らの分まで「コイツに全部持たせていいから」と言って俺に持たせるのだ。
俺はお前の奴隷か! とツッコミたいけど恐らく真顔で「そうだろ」と答えられそうなのでやめておく。
慶介たちはいわゆるリア充という部類の人間で真っ直ぐ家に帰る奴らでなく、カラオケやボーリング、ファーストフード店などを渡り歩く。
その間、荷物を持つのはもちろん俺だ。
その日もカラオケに行き、ゲーセンに寄り、辺りはすっかり真っ暗になっていた。
家に近づくたびに、とりまきたちとその荷物が少しずつ減っていく。
けれど、肝心の慶介の荷物がいつまでも俺の背中に鎮座していた。
家が隣同士だから仕方ないとはいえ、あの土地に家を建てると決めた親を恨まずにはいられない。
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