673人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
舞い上がる土埃が口の中に入り、モンスターの体を伝って落ちてくる血が俺の服にじわじわと滲んだ。
「ひ……!」
早くここから抜け出そうともがいたが、ドン! と上から加わった重さと衝撃にさらに身動きがとれなくなった。
「ぐぇ……!」
「ハハハハ! ヤベぇ! 俺、やっぱり天才だな」
どうやら誰かがモンスターの上に乗りトドメを入れたようだ。
ソイツの声は浮かれきっていて、踏まれた蛙のような俺の呻き声は聞こえていないようだ。
「ちょっとぉ~、それはボクの制止魔法のおかげでしょ~」
少し離れたところから間延びした少し幼い感じの声がモンスターの上にいる男に反論した。
「そうだ、そうだ。全てはチェルノのおかげだ。調子に乗るなよ、アーロン」
「うるさい、黙れ。ボクの援護をするな。鬱陶しい」
好青年然とした声に、さっきの間延びした声とは打って変わって、鋭い剣呑な声で切り捨てる。
「はいはい、ご協力ありがとーございました。それじゃあこの斧は折半ってことで」
アーロンと呼ばれた男は、モンスターを蹴ってそこから飛び降りた。
モンスターと地面の隙間に人の足が見える。
きっとアーロンのものだろう。
俺は慌てて大きな声で叫んだ。
「た、助けてください……!」
男の足がピタリと止まった。
最初のコメントを投稿しよう!