勇者、登場!

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舞い上がる土埃が口の中に入り、モンスターの体を伝って落ちてくる血が俺の服にじわじわと滲んだ。 「ひ……!」 早くここから抜け出そうともがいたが、ドン! と上から加わった重さと衝撃にさらに身動きがとれなくなった。 「ぐぇ……!」 「ハハハハ! ヤベぇ! 俺、やっぱり天才だな」 どうやら誰かがモンスターの上に乗りトドメを入れたようだ。 ソイツの声は浮かれきっていて、踏まれた蛙のような俺の呻き声は聞こえていないようだ。 「ちょっとぉ~、それはボクの制止魔法のおかげでしょ~」 少し離れたところから間延びした少し幼い感じの声がモンスターの上にいる男に反論した。 「そうだ、そうだ。全てはチェルノのおかげだ。調子に乗るなよ、アーロン」 「うるさい、黙れ。ボクの援護をするな。鬱陶しい」 好青年然とした声に、さっきの間延びした声とは打って変わって、鋭い剣呑な声で切り捨てる。 「はいはい、ご協力ありがとーございました。それじゃあこの斧は折半ってことで」 アーロンと呼ばれた男は、モンスターを蹴ってそこから飛び降りた。 モンスターと地面の隙間に人の足が見える。 きっとアーロンのものだろう。 俺は慌てて大きな声で叫んだ。 「た、助けてください……!」 男の足がピタリと止まった。     
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