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地獄の沙汰も金次第
「俺、今モンスター倒して疲れたしなぁ」
は? え? 嘘だろ?
男の非情な反応に絶句した。
普通、人が困っていたら助けるもんだろ!
「まぁでもお前の気持ち次第だな」
「は?」
唐突に男が手を差し出した。
てっきり俺を引き出してくれるものだと思い手を伸ばすとペちりとはたかれた。
「違ぇよ。なんで俺が男と手なんか繋がねぇといけないんだよ」
俺の手を汚らしいもののような目つきで見て男は吐き捨てた。
「はぁ? じゃあ今の手はなんだよ!」
「決まってるだろ。救出代、一万ピーロだ」
「はぁ!?」
一万ピーロがどのくらいするのか正直分からないが、金を請求されていることだけは分かった。
人が目の前で困っているというのに、金を要求するとか……こいつ、クズか!
慶介も大概のクズだったが、この男も負けず劣らずのクズだ。
「どうする? 俺はどっちでもいいぜ。ただ、ここはモンスターがウジャウジャいる森だ。次に来るのはお前を食べるためにやってきたモンスターかもしれないぜ」
にやにやと笑う男の顔面に、届くことなら拳をめり込ませてやりたかった。
「……あの、たいへん申し訳ないんですけど、金は持っていないです」
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