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ジーアは、出ていった子らを責めるような言葉は口にしなかった。
カヤリもある程度は予測していたらしかったが、自分の愛弟子のような存在のリネまで出ていくことは予測できなかったらしく、表情は厳しかった。
そんなカヤリの背後から、スエンが叫ぶ。
「ジーア!私に後を追わせてください!リネは子犬を連れていった!リネにあの子らを上手く育てられるとは思えない!」
怒りに燃えて、今にも駆け出しそうなスエンは、この集団の中でもっとも激昂していた。
人より犬の方が、心を通わせやすい少女なのだ。
愛情を注いだ犬たちを2頭だけとはいえ奪われて、その激情はおそらく子犬を取り戻しリネを罰しなければ収まらないものなのだろう。
「ジーア!」
「許可しない。行かせてやれ。」
「ジーア!!
「今、リネたちを追いかけて、スエンが無事に戻れなくなることの方がよくない。それに、リネが群れを離れるときは、1頭連れ出すことを許すつもりだった。それは、カヤリも承知している。」
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