プロローグ

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「ジーアはどうした!」 ピィッと鋭い口笛を吹きながら、少女が叫んだ。 風雪にかき消されることなく、その声は仲間たちに届く。 「さっき、何か見つけてた!」 「拾いものがあるって!」 「美味しいものだといいね!」 「ざっけんな!今!目の前にいるやつ以上の食いもんはないだろうが!」 怒鳴り合う少女たちが手にするものは、食事に関するものではない。 スプーン?いいや、違う。 フォーク?まあ、先端は鋭いだろう。 ナイフ?切れ味がよければ、あとで使う。 彼女らが手にしているものは、槍だ。 先端が石器もしくは骨の。 そして、目の前にある「食いもん」は、リコッタチーズ入りのふわふわパンケーキでも、表面カリカリのワッフルでも、クリームとフルーツのハーモニーが絶妙のフルーツタルトでもなければ、ステーキ、フォアグラ、アクアパッツァなんぞのおしゃれな料理でもない。 肉だ。 肉の塊だ。 さらに言えば、この肉。 生きている。
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