炬燵は私を悩ませる

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 だが温度調節ダイヤルは、確かこの辺の対面側についていた筈だ。確認しようとするならば、妻の目の前を通って行かなければならない。  妻の視線とテレビの、固く結ばれた絆を断ち切ってゆくなど、私にできるわけがない。では、炬燵の下から――いや、始めから無理と分かる計画は無意味だ。我が家の狭さを呪っても仕方ないことと同じだ。  よしんば向こう側に行けたとしても、布団をめくり上げて設定温度を確認しようとすると、妻に寒いと指摘され不興を買うだろう。炬燵に入る者にとって、その布団をめくり上げる者は死に値する。  では故障か?  私は座ったまま見える限りのコードを目で追った。布団の下からスイッチ、スイッチからその先、壁の電源プラグに至るまで、見た目に問題はない。  電熱器が赤くなっているか確認したかったのだが、これも先ほどの理由から不可能だ。  他に可能性はなんだ?  その時、啓示のごとき閃きが脳内に生まれた。
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