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元々店は手伝っていたので商品は問題なく用意できても、高校生がたったひとりじゃ普段と同じ営業は諦めるしかない。そこで学校へ掛け合って、学校内での昼食の販売を一時的に認めてもらった。職員室で誰彼構わず泣いて縋って手に入れたチャンスだ。
「昼休みに弁当を売っていいことにはなったけど、その代わり始める以上当てにして登校する生徒が出てくるから『安定した営業を一定期間続けるように』って校長と約束したんだ。実際やってみてから『あ、コレ辛い』って思っても今更やめられないんだよ! 現に今! 辛いと思ってます!」
様子見で少なめに持ち込んだ初日は散々で、しかし次の日から売れ行きは一気に伸びた。嬉しい誤算だったけれど、ひとりで搬入できる数は限られる。
夏の早い夜明けよりも早く起きて、具を調理し飯を炊き詰めた弁当を台車に乗せゴロゴロ押して学校と往復。授業の合間も抜け出してやっぱり往復。学校が離れた所にあったら地獄だったと思う。それでももうやめたい。辛い。
「明日の仕込みがあるからサッサと帰りたいのに、そこへ立ち塞がるのがホラお前だァ!」
僕にとっても憧れの、みんな大好き副島さん。こんなにも邪魔に感じる日が来るなんて。
彼女はどうやら諦めていない。強い視線を揺らさずに、自分に言い聞かせるように小さく頷くと一歩前へ進み出た。
「あの、私、副島依央って言います。別のクラスで――」
「あぁんもう、知ってるよォ!」
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