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「盗まれた弁当でも、それで食中毒とか起こされたらこっちの責任になるんだよ。ココは屋根もないし目隠しのシートが日除けになってるだけだから、傷んだっておかしくないよね? じゃー僕はどうすりゃーいーんでしょーか!」
食品を扱う商売にとって、食中毒騒動はまったくもってシャレにならない。とりあえず営業停止、復帰しても大手を振っては販売できなくなる。致命的だ。
そんな問題で苦しんでいるところへ、みんなのアイドルが恋愛脳でノコノコやってくるわけだ。今日もいるわけだ。
「あの、返事はすぐじゃなくっていいから。私、待つから」
副島さんは視線を泳がせて戸惑いながらも、なんとか食らいつこうとしている。なんてしつこいんだ。油汚れか。
「それどころじゃないねェ! 本当に本当にそれどころじゃない。『勉強・部活に集中したい』とかいうのは断りの決まり文句らしいけど、僕はもっと切実だ。なんてったって家業がかかっています! 告白よりお買い上げください! 〝胃袋にガツンとデラックスボリューム弁当〟、おひとついかがでしょうか!」
「そんなに揚げ物が多いとカロリーが気になるからちょっと……」
「なんだよ! 僕のことが好きなら、うちのメニューのことも好きになりなよ!」
こんなに時間が経っていたら売れるはずもない弁当をコンテナへ戻し、一際大きな声で吠える。
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