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「女子は柔剣道場に迎え。男子は体育館だ」
ホームルームで言われたその言葉に、教室がざわめく。私は眼鏡越しに窓を見ていた。一階のプールに水を張っている。明日から水泳の授業が始まる。ゆらゆらと揺れる水面が窓に映り、三階の息苦しい教室が小さなプールのよう。
窓ガラスに映るプールの波ってどう書けばいいのだろか。ガラスの透明感を残してでも教室を水面みたいに描きたい場合、薄い色から塗っていくとしても……。
「蕾、ねえ、聞いてる? 蕾?」
「え、あ、……紗矢ちゃん」
窓を見ていた私の視界に、逆さまで紗矢ちゃんの顔が遮ってくる。
地毛の色素の薄い茶色の髪を撫でながら、廊下側のドアを指さす。
「服装検査だってよ。女子は柔剣道場。聞いてた?」
「うん。聞いてたよ。紗矢ちゃん大丈夫?」
立ち上がって皆の不満埋めく波の中に歩いていくと、大げさにため息を吐く。
「今日が服装検査だって、職員室のスケジュールボード見て確認済み。暗号にしては分かりやすいよね。星マーク」
「そうなんだ」
「見て、ピアスホールに透明のピアス入れて、ファンデーションで隠してみたの」
紗矢ちゃんが耳に髪を掻けながら、隠れたピアスホールを見せてくれた。確かにパッと見は分からない。けれど紗矢ちゃんは地毛の髪も毎回念入りにチェックされるし、スカートも短いって引っかかるし、指も透明のネイルを塗っていて怒られたりする。
「ね、髪やっぱ結んだ方がいいかな。ゴム貸してよ」
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