一、

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「え」 「三つ編み止めてポニーテールにすればいいじゃん。お揃いにしよ、ほら早く」  半ば強引に三つ編みを解かれてしまい、仕方なくもう一つの三つ編みも解く。  同じポニーテールは、華やかで可愛い紗矢ちゃんと比べられそうなので、後ろに一つで三つ編みに編み込む。  廊下はざわめくクラスメイトの声の中に、プールから塩素の匂いが漂ってきている。この匂いが嗅ぐと、ああ、夏だなと感じる。 「三年になって初めての服装検査じゃん? 絶対に評点に影響あるって皆言ってたよ。まあだからって私の二年間がチャラになるわけじゃないけどさー」  ポニーテールにしながら豪快に笑う。きっと紗矢ちゃんは服装検査に引っかかっても、先生に怒られても、プールの授業受けられないって罰になっても平気なんだと思う。  対照的に私はきっとどれかひとつでも引っかかったら、萎縮して泣いてしまう。  怒られるっていうのは、他人に自分を否定されることだし、服装検査に引っかかるってことは皆と違う異質な部分が見えてしまう、だから私は、皆の中に混ざって目立たなくていいから、気づかれなくても良いからひっそりと息をしていたい。 「顔色悪いよ。大丈夫だって。蕾は優秀なんだから先生たちのチェックも甘いって」
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