一、

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「まじねえわ。脱ぐし。脱げばいいだろ」 「うるさいぞ、陣之内」  紗矢ちゃんが居残りになった瞬間、不機嫌そうに腕を組んで壁にもたれかかっていると、同じく居残り組の男子たちが体育館からこちらに移動してきたようだった。 「つか、ありえなくね? シャツが派手だからアウトってさ。俺のこと嫌いなだけじゃね? ほーら脱いだ。脱いだから俺帰るー」 「止めんか。どっちにしろお前は遅刻しかしてないから居残りだ」  クスクスと女子たちから笑い声が漏れる。男子の居残りは彼だけだったようだ。 下半身裸の、先生より頭一個大きい陣之内優大くん。確か180センチ超えてると言っていた。同じクラスだけど、授業中に『成長痛で痛くて寝れねえ』と寝ぼけて叫んで、先生に頭を教科書で叩かれていた人だ。いつも騒がしい。手に持っているシャツが、蛍光ピンクで英字で『タイムイズマネー』と書かれていたのはちょっと面白い。 「っち。あーあ、まじない。俺みたいに散々テストわるかった奴が今更服装検査で引っかかって何? 底辺評価がこれ以上悪くなるかよ」 「その態度が変わらないうちは、スコップで評価を掘り下げていくぞ」 「まじかよ」  先生の言葉に急に大人しくなった。そして紗矢の隣に行くと、二人で耳元で何か話し出して笑っている。反省とか萎縮って言葉をあの二人は知らないと思う。  居残りと言われた生徒が、彼の周りに集まっていく。華がある綺麗な生徒ばかりだった。  出荷される私たちは、いらないから出荷されてしまうんじゃないかなって彼らを見て思う。
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