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「乗ってどうすんだよ」
「えっと……走るんですよ」
「分かってるけど、どこ行くんだよ、こんな寒い中、走り回る方がもっと寒くなるだろ?」
「そうですけど……バイク乗ってみたいなぁって。昔パパもバイク乗ってて、すごく楽しいって言ってたから」
パパがねぇ。ならパパに乗せてもらえばーーそう言いかけて、最低な親の背中を思い出し、柄にも無く、再び怒りがこみ上げ、思わず俺は一度しっかりと目を閉じた。
何処の親も、自分の思い通りにならなきゃ、こんなに自分達のことを好いてくれる子供を、簡単に捨てられるんだな。
いつ振りかに湧いてくる、親への怒り。忘れていた何かが蓋を開け、たくさんの感情を思い出させようとする。
いやいや、今はそんな時じゃない。
冷静な大人の俺が、それを引き止める。
だめだな、普段と違うことが起こると、冷静になれない。まだまだひよっこだ。
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