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楽しみを待ちわびる、こんな状況でも輝く瞳を欠かさない子供。その雰囲気に飲まれることは癪に障るが、この場は騒がれるよりはマシか。
「ちょっとだけだぞ」
「やったー!」
ヘルメットは一つしかない。仕方ないので子供に被らせると、あまりにも大きくて、まるで首振りキーホルダーの装いに、思わず吹き出してしまった。
「準備万端ですよ! いつでもゴーです!」
「振り落とされるぞ、嫌ならしっかり掴まっとけよ」
「はい!」
草むらから出したバイクは、細身でムダが無い。そして俺以外を乗せたことなんて無い。不安ばかりではあるけれど、まぁ少し走るだけ、そうしたら大人しく家に帰るだろう。二人乗り用に出来たものじゃないから、恐怖で逆に、もっと早く帰りたがるかもしれない。
「どーこーまーで行きますーかー?」
変なイントネーションで、バイクの音に負けない大声で、子供は話しかけてくる。
答えなきゃ、きっといつまでも聞いてくるよな……。
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