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泥棒サンタ、なに願う?
「ノーヘルだしな、警察に見つかっても困るから、少し先の山頂まで」
「隣のー山でーすかー? やぁったー!」
何故そんなイントネーション? ともう一度問いたかったが、何より先に、誰かに見つかる前にここを去らねばならない。住人ならまだしも、警察だと厄介どころの問題じゃない。
エンジンを吹かし、もう一度加速する。この町のすぐ隣、一歩道を逸れると田園風景が広がる田舎町になり、そして山道となる。何度も曲がりくねる道をひたすら登り、ある程度行くとすぐに山頂になる。そこから少し脇の道に逸れ、もう一度エンジンを吹かした時、目的地の高台に着いた。
こんなクリスマス時期には、恋人同士や家族連れが沢山いて、それぞれがそれぞれの想いを抱き、眼下に広がる遠くの街明かりを眺める、そんな場所。
けれど、あれよあれよと時間は経ち、今は深夜三時と言った所か。人一人居る訳もなく、貸切状態。俺は徹夜には慣れているから平気だが……子供は流石におねむの時間だろう。
そう考え、バイクを止めて振り返ると、辛うじて見えるヘルメットの中の目は、キラキラと輝いて、こちらをじっと見ていた。
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