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「サンタさん、あ!? 泥棒さんの方がいいですか?」
「どっちでもいいよ」
「じゃあサンタさん、素敵な場所に連れて来てくれて、ありがとうございます」
「どうしたんだよ急に」
改まって礼なんて言われると、自分の気持ちまでも落ち着かなくなる。人に礼を言われる事なんて、生まれてこの方、した事ないし、何より、俺は立派な “誘拐” をしたところなんだから。
「ここの “たかだい” の話、知ってますか?」
「いや」
「ここに来て、お願いごとを、心の底から三回唱えたら、叶うって言われてるんだって」
「そりゃ素敵な話で」
「ほら、一緒に唱えましょっ! 手を合わせてー!」
半ば強引に腕を引かれ、柵の前で町を眺めさせられた。何で俺までそんな事を、そう思っていたけれど、改めて眺めると、どの家々も明かりは消えているが、点々と道を照らす街灯が、あちらこちらへ伸び、ちらほら走る車の光が、流れ星のよう。
この町も、まだこんな景色見せるんだな。
珍しくそんな事を考えたもんだから、どっと疲れが出てきた気がして、柵に体を預ける。冷たいそれが、眠気を覚ましていく。多少の眠気は平気だけどな!
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