非常に困った

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「少しだけだぞ」 「わぁ! ありがとうございます!」 「早く言え」 「あのね、私を “ゆうかい” してください!」 「はへ?」  ベッドの上に姿勢を正した子供。何を言い出すかと思えば、突拍子も無い。  誘拐しろ、だと?  思わぬ返答に、変な声を出してしまった俺だったが、子供は構うこと無く、次から次へと話し始めた。 「あのね、パパね、仕事ばっかりで全然構ってくれなくてね。家にもほとんど帰って来ないの。それでね、ママがね怒って……ママもあまり帰って来なくなってね。二人ともお外に好きな人がいるんだって。それでね、あのね、あの……その好きな人たちとね、幸せになってもらうには、私は邪魔なの! だからね “ゆうかい” してください。サンタさんのお手伝い、何でもするから! お願いします!」  息継ぎもせず、よくぞ言い切りました。そう言いたくなるほどの話。そして何より、子供の口から聞くような話じゃない。  こいつの親は、いったい子供にどんな話をしてるんだ。要は浮気不倫の類だろう。どんなバカ親だ。  けれどその内容は、本人にとっては真剣なようで、何とかして叶えたいと、子供はやはり、爛々とその瞳を輝かせる。
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