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泥棒サンタ、誘拐する
俺の方が現実の理解に追い付いていないようで、子供はどこからともなく取り出した靴を履き、窓を開く。
雪は降っていないが風が冷たく、温まって来ていた身体を、包み込むように吹き込む風が、改めて目の前の現実を見せる。
小学生にもなっていないだろう子供が、サンタさんだと信じる俺へ、誘拐しろと。そしてもう準備が出来たから、今すぐ行こうと。
あってるか? あってるな。
ーーーー合ってちゃいけないじゃないかっ!!
「待て待て待て。誰が誘拐するんだよ」
「サンタさんがですよ」
「誰を誘拐するんだよ」
「私をですよ」
「何でだよ」
「だから、ママとパパに幸せになってもらうために」
「何で誘拐なんだよ」
「だから、ママと」
「じゃねーよっ!! 何で親の為に、お前がそんな事しなきゃいけねぇんだよ」
俺の疑問に、子供は理解できないようで、不思議そうな表情で首を傾げる。吹き込む風が強くなり、カーテンが思い切り広がり、子供を包みこもうとする。
月明かりに照らされる子供の顔が、何処か寂しそうに見え、けれど決意した気持ちを変えるつもりは無い、そういう強さも見える。
俺は……誘拐なんて、趣味でも仕事でもしねぇ。
どうしたものか……しかし、もう行く準備万端。
困った。
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