第1章

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♪~ 和室から聞こえる聞き慣れた和楽器音楽。 「さすがですわね、詩さん。日に日に輝いていってます。」 日本舞踊の先生の、“姉”を絶賛する声。 「そんなコトありませんわ、立原家として当たり前のコトです、ねぇ、詩?」 母の謙遜する声。 「詩さんには、妹さんがいらっしゃるとか・・・」 「あぁ…いますわよ、でも詩と正反対で、日本舞踊なんてできるはずないんですのよ、あの子は」 先生の言葉に重ねるように私への罵声は続く。 「あんな子、産むんじゃなかったと夫婦共々、感じておりますわ。」 ほほほほほ、と少し刺々しい笑い声。 (慣れたけど、こんなの…所詮、私はお姉ちゃんの引き立て役。・・・を、演じるってトコかなぁ) 姉の学力は私の学力。 姉は私にテスト範囲を勉強させ、出そうなトコだけ私にまとめさせる。 間違った範囲を教えれば、姉に暴力を振るわれる。 大和撫子、という異名をもつ姉は家庭内暴力、通称BVの主犯。 私の体は痣ばかりだ。 そんな姉でも、日本舞踊だけはずば抜けて良く、幼い頃から天才天才と言われていた。 私は家を出て、少し遠目の自然公園へ行く。 一番の安らぎの場所は自然公園の中のクローバー畑。 人はおらず、ゆったりできる。 私は寝転がり空気を吸う。 あぁ、このまま消えてしまいたい… 「おー、死んどらんかったんな!」 気がつくと私は眠っていた。 そして、勝手に死んだことになっていたらしい。 「誰、あなた。」 私が聞くと、彼は「にひ」と笑い、 「柳田俊!!」 と言った。 私は彼に対してそこまで興味も無かったし、なにしろ肌が焼けていて怖かった。 「そう。」 私はそれだけ言って踵を返した。 「あんたも名乗んなよ!!失礼やん!?」 “やん”・・・関西人か。 「立原雅。」 そう言うと俊は「ほー…」と言った。 「んっ!?立原財閥のお嬢さん!?」 急に声を張り上げるものだから、私は驚き「そ、それがなに?」と言った。
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