オオカミとセンセー 3

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 三島がじっと押し黙ったまま、ましろを見つめた。  あのときの氷を溶かすような温かな微笑ではなく、温度のない真顔だった。  ましろは、三島のそんな表情を見ていたら胸の内側がよじれそうになった。 (そんな顔で見るなよ……!)  真白はブレザーの内ポケットに忍ばせたチョコレートに、震ええる指先をあてた。 (そんな顔で見つめられたら、言いずらいじゃねぇか……!)  渡すなら今しかないと頭ではわかっていても、身体が硬直して動けない。なのに、身体は発火しそうに熱かった。このままではチョコレートが溶けてしまうと思った。 (”人間は恋と革命のために生まれてきたのだ”)  そのとき、ふいにましろの脳裏に『斜陽』の一文が浮かんだ。 (”戦闘、開始”)  『斜陽』の一文が、ましろの震える指先を止めた。 「先生! これもらってくれ!!」  内ポケットに忍ばせたチョコレートを差し出しながら、ましろは叫んだ。 「俺、ずっと先生のこと――」 「すいません。私はひとにものを勧められるのは嫌いです」  ましろの告白を、三島がギロチンの鋭さで切り捨てた。 「あ……」  こうなることを考えなかったわけじゃなかった。 (俺は不良で、先生はセンセーで……。しかも、男同士で……)     
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