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三島がじっと押し黙ったまま、ましろを見つめた。
あのときの氷を溶かすような温かな微笑ではなく、温度のない真顔だった。
ましろは、三島のそんな表情を見ていたら胸の内側がよじれそうになった。
(そんな顔で見るなよ……!)
真白はブレザーの内ポケットに忍ばせたチョコレートに、震ええる指先をあてた。
(そんな顔で見つめられたら、言いずらいじゃねぇか……!)
渡すなら今しかないと頭ではわかっていても、身体が硬直して動けない。なのに、身体は発火しそうに熱かった。このままではチョコレートが溶けてしまうと思った。
(”人間は恋と革命のために生まれてきたのだ”)
そのとき、ふいにましろの脳裏に『斜陽』の一文が浮かんだ。
(”戦闘、開始”)
『斜陽』の一文が、ましろの震える指先を止めた。
「先生! これもらってくれ!!」
内ポケットに忍ばせたチョコレートを差し出しながら、ましろは叫んだ。
「俺、ずっと先生のこと――」
「すいません。私はひとにものを勧められるのは嫌いです」
ましろの告白を、三島がギロチンの鋭さで切り捨てた。
「あ……」
こうなることを考えなかったわけじゃなかった。
(俺は不良で、先生はセンセーで……。しかも、男同士で……)
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