オオカミとチョコレート

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オオカミとチョコレート

 そこは駅ビルの地下にあるバレンタインデーチョコ売り場だった。  バレンタイン当日だというのに、そこそこの広さがある売り場は人ごみを掻き分けなければいけないほどの大混雑で、客のほとんどはもちろん女だ。なかには男もいたが、だいたいがスーツ姿の大人で、ブレザー姿の男子高校生はましろしか見当たらず、ましてや金髪のウルフカットのヤンキーなど皆無だ。 (場違いだ……)  ましろは、いるだけで精神力がガリガリ削られそうな状況のなかで、ガラスケースに飾られた色とりどりのチョコレートを物色した。  生チョコ、アーモンドチョコ、チョコレートガナッシュ、ガトーショコラ……。  並んでいるチョコレートは精巧なフィギュアのように形が整っていて、(これってマジで食えるのか?)と思ってしまう。色とりどりのマジパンで作られた花や蝶が彩られていたり、つやつやした生クリームは食べるのがもったいないくらいだ。 (最近のバレンタインチョコってすげーのな……)     
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