オオカミとチョコレート

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 売ってるものはチョコレートだけのはずなのに、こんなに種類があることに驚いてしまう。ましろは普段、甘いものなど食べないせいもあり、どれも同じに見えるし味の違いもまったくわからなかった。  だから、どのチョコレートを相手が好むかもまったくわからなかった。 (あのひとって、どんなのが好きなんだろ……)  そう考えたとたん、ましろはこれからチョコレートを贈る相手の恋愛対象を想像し始めた。 (俺みたいなガキじゃ、やっぱ相手にしてもらえないのかな……。ていうかそもそも学生じゃ恋愛対象になんかならないかもしれない……)  ましろは賑やかなチョコレート売り場でだんだん不安になってきた。  思えば、なぜ自分はこんなところへ足を運んでしまったのだろう。  バレンタインデーは告白するには絶好の口実が作れる日だというのが世間一般の常識ではあるが、自分のようなヤンキーが告白するなんて柄じゃない気がする。 (気持ちを伝えるどころか、受け取ってすらもらえないかもしんねぇ……)  そうなったらおしまいだ、とましろは思った。  バレンタインというイベントに浮かれて、バカなことをしたと気付いた。好きな人へ想いを伝える口実を作ったお菓子会社に腹が立った。 (バレンタインなんて、クソだ……)  傷つくくらいなら、今の関係が壊れるくらいなら、何もしないほうがいいと思えてきた。  そのときだった。 「お決まりですか?」     
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