オオカミとチョコレート

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 ガラスケースの向こう側にいる女の店員に声をかけられて、ましろははっと顔を上げた。列の順番がきたのだ。  ましろはヤンキー男子がこんなところへひとりで来ていることに気恥ずかしさを感じて、顔が赤くなった。 「……なんでもいい」  ましろが顔を俯かせてやけくそ気味に言うと、店員が「は?」と素っ頓狂な声を上げる。 「なんでもいいって言ってるだろ。適当なの美繕えよ」  寿司屋の注文かよ、と内心で自分にツッコミを入れた。  このとき、ましろはチョコレートをあの人に贈るのをやめようと思っていた。並んでおいて買うのをやめたのでは格好がつかないので、買うだけ買って自分が食べるつもりだった。  すると店員が「ははーん」といった微笑を浮かべて言った。 「お相手はどんな人ですか?」 「……あ?」  質問返しをされるとは思ってなかったましろが睨み返すと、まだ20代そこそこくらいの女店員がにこやかに言った。 「相手の年齢とか、タイプとか言ってくれれば、よさそうなのを選んであげるわよ?」  なんだこいつ急にため口か? と女店員に苛立ったが、ましろは言った。     
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