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オオカミとセンセー 2
「俺はデパ地下で女子高生がモテないヤンキーに絡まれてるのを助けただけだよ」
ましろは進路指導室の椅子にもたれかかりながら、机を挟んだ向こう側で氷の形相を浮かべた三島に言った。
「なのになんで俺が説教されるわけ?」
ましろは、緩めたネクタイと第二ボタンまで開いたシャツの隙間から覗く痩せた胸を堂々と張った。
「……」
三島が机に両腕の肘をつき、手を組んでいた。
組んだ手で口元を隠し、メガネ越しの怜悧な瞳がましろをじっと見つめてくる。
その表情からは怒ってるようにも困ってるようにも見て取れるのだが、気が大きくなっていたましろは勝手な解釈をした。
(お。センセーってば、困ってる?)
黙ったままの三島をチラ見して、ましろは「ふふん」と鼻を軽く鳴らした。
三島は滅多なことでは表情を崩さない教師だった。進路指導教師のほか、国語の授業も受け持っているが、いつも淡々と黒板にチョークを走らせ、低いがどこか甘さを感じさせる声で文章を朗読し、文法やレトリックを解説する。
ましろはいい気分のまま、三島との出会いに思いを馳せた。
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