悪魔

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悪魔

 サイコパスは考えた。  サイコパスは、どうして嫌われるのだろう。  サイコパスは、どうしてみんなから嫌悪の眼差しを向けられるのだろう。  サイコパスは、どうして友達ができないのだろう。  サイコパスは、どうして常人としての扱いを受けることができないのだろう。  サイコパスは考えた。  サイコパスは、人の感情が理解できない。  サイコパスは、自分以外を道具として扱う。  サイコパスは、常識で言う『悪』が理解できない。  サイコパスは、人の命の重さを計ることができない。  サイコパスは考えた。  でも……本当に分からない。  人の命がこの世界で一番重いと言われても、ピンと来ない。  人はなぜ、人の命が最も尊いものだと自信をもって言えるんだ……?  常人は、憎しみから人を殺める。  常人は、娯楽で生き物を狩る。  常人は、いろいろなものを食べる。  常人は、様々な生き物を実験に利用する。  つまり、常人は直接的にも間接的にも、多くの生き物の命を奪っている。  それに比べサイコパスは、理屈なしでは生き物を殺さない。  常人は、相手の痛みが理解できるのに他人をいじめる。  常人は、自分の力を証明するために相手をねじ伏せる。  常人は、お金の力で人々を動かす。  常人は、権力で自分の思い通りに世の中を支配する。  つまり、常人は性格が捻じ曲がっていて、他人に説教できる立場にない。  サイコパスは考えた。  本当にこの世界に必要ないのは……常人だ。  その答えは明白であり、ゆるぎない。  本当に質が悪いのは、サイコパスではなく、常人だ。  頭では理解できているのに、常人は感情に流されて動く。  意味のない殺生を繰り返し、満足を得る。  常人は、まるで『悪魔』のような存在だ。  そう考えると、世の中は本当に恐ろしい場所である。  質の悪い『悪魔』で溢れた社会。その『悪魔』は今もなお増え続け、世界中の生き物の頂点に立った気でいる。  ……駆除しないといけない。  サイコパスが、『悪魔』をこの世界から排除しなければならない。  そうだ……だからこそサイコパスは存在するんだ。  サイコパスは考えた。
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