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「それがなぁ、結人。俺、未だに北原に会うとすげぇ怖い目で睨まれるんだよな」  東城は結人に焼いてもらった肉を口に運びながら、ちらり、と結人を見る。セクシーな上目遣い。ファンが見たら悲鳴をあげて倒れてしまうかもしれない。 「東城さん、あいつに何かしたんでしょ」 と結人がくすくす笑って誤魔化す。 「俺が北原にした意地悪は、お前に頼まれて北原の前で態とお前とキスしたアレだけだぞ。意地悪しようにもあの件以降、あいつ俺に寄り付かないし、挨拶も無し。擦れ違おうもんなら殺されそうな目で睨まれる」  思いの外真剣な眼差しをしていた東城に結人も笑うのを止める。 「あのときは……変なこと頼んですみませんでした」 「結人に今更謝らせたいわけじゃねぇよ。まぁ、お前とキスできるなんて、俺も役得だったし」 「また、そんな冗談」 「冗談じゃねえよ。結人が付き合ってくれるなら、今すぐこの場で女全部と手ぇ切ってお前だけと真面目に付き合うっていつも言ってるだろうが」  沢山の女の子を虜にしてきた淡い彩の瞳にまっすぐに見つめられて、結人は思わず下を向いてしまった。結人が口を開く前に 「でもまぁ、俺とは付き合ってくれないよな、結人は。だってまだ北原のこと、好きだもんな」 「違……っ」 「違う?違わないだろ。顔に書いてあるんだよ、北原征弥に恋してますってな」 「ええっ?!」 驚いて自分の顔を思わず触った結人に東城は吹き出す。 「冗談だよ。結人のそれこそ主演男優賞並みの完璧な演技で、傍目からはぜんっぜんわかりません」 「からかわないで下さいよ……まぁ、俺がどう想ってようが、もうアイツの中ではとっくに終わったことですから」  ぐいっと仄かに濁るグラスを煽る。  そう、結人があまりに酷いことをしたから、結人が徹底的に征弥を拒絶したから、もう征弥は昔のように恋い焦がれる熱い瞳を結人に向けなくなってしまった。別れてから暫くの間は、じりじりと焼かれて溶けてしまいそうな激しい視線を感じたが、あるときから、それはぷつりと途切れた。  もう、愛されていないかもしれないと悟ったときから、結人はその事実を目の当たりにするのが怖くて、征弥のあの強い瞳を真っ直ぐに見れなくなった。 「なぁ、結人。北原事務所辞めて、アメリカに留学するって噂、あれ本当なのか?」 「え?」  つるり、とグラスが結人の指先から零れ落ちた。グラスは床にぶつかって、砕けた。     
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