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「……凛子よ」
「凛子、お前さ」
いきなり呼び捨てにするなんて。凛子は腹が立っているのに、それを不愛想な表情に醸すことしか出来ない自分が憎らしかった。少年はそれに気づいているのかいないのか、凛子の黒目がちの眼を見て言葉を発す。
「凛子、俺を吸血鬼にしてくれよ」
「はあ?」
凛子が思い切り厭そうな声を出した。声と同時に、厭そうな表情も思い切り出せたので、相当抵抗を示したように自分では思ったのに、少年はまるで意に介さない。
それどころかますます弾んだ声で。
「なあ、頼む凛子。俺も吸血鬼になりたい。永遠の命が欲しいんだ。頼む」
「はあああ?」
ふ、ふふと、先ほどから聞き役に徹していた岡田が声をたてた。若い二人が彼を睨みつける。
「先生……俺は本気だよ」
「私だって本気で厭よ」
ほほほほ。岡田はおかしくてたまらないというように腹をおさえている。
「あなたたちときたら、面白すぎるわ。凛子ちゃん、この子が前話した204号室の子、朝倉レイ君よ。レイ君、この子は同じクラスの凛子ちゃん。お察しの通り、吸血鬼よ。この子が生きるための血を、医者の私が提供しているってわけ」
内緒よ、とレイにウィンクする岡田は、本当に艶っぽく見えた。本当に二十年経ったら二人の交際を考えてもいいのかも、と凛子が思うほど。
「よせやい、俺はおかまに興味ない」
「あら、じゃあ凛子ちゃんには興味あるのね」
「吸血鬼としてはな」
レイが肩を撫でさする仕草が大仰で、凛子は思わず笑ってしまった。そこで、不愛想なナー
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