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(もし私が今ここでグループに入ってしまったら、あの子は正真正銘独りぼっちになってしまう。それを意地悪な男子が騒がない訳がない。
「やあ、ぼっちー」
だとか、
「お前暗いからダメなんだよ」
などと常に騒ぎ立てている男子が。瞳が潤んでいるのは、恐れていた事態が起きてしまことへの恐怖)。
少し逡巡してから、凛子はごめん、でもいいよ、と言って美里に頭を垂れた。あの根暗さんがその時歓喜に震えたか何を考えたかは、一瞥もしなかったので分からない。
「ダメかな」
少しいらだったような声音で、美里が言う。それでも、凛子は揺るがなかった。
「せっかく誘ってくれたのに、ごめんね」
凛子がそう言って席を外す折、美里と仲の良いクラスメートが、
「何あれ、感じ悪い」
と言い放ち、美里が
「しっ」
といさめたまでは背中で聞いた。くだらない。だから人間って嫌い。同じ意見しか置かないイエスマンを揃えて、みんなで何か欲心をおこしながら固まっていく。
本当に人間は狡くて、汚い。人間たちがもっと頭がよくなったらいいのに。そして心の浄化がなされていけばいい。
(人々は私を化け物というけど、化け物はどっちかしら)
そう思えば思うほど、こころの虚無が黒くいびつに膨らんでくるような気がした。
◆
「と、いう訳なのよ」
放課後、委員の仕事を終えて凛子はまた益子病院に向かった。最近はストレスが溜まると病院に行っては岡田にぶちまけるのが癖になりつつある。血を貰う以外は人間と関わりたくないのに。話を聞いて欲しいなんて、人間みたいなことを。凛子は自分のこころの弱さをひどく疎んだ。
「へえ、そんなものなのかしらねえ」
白衣を纏った岡田はくるくる回る回転いすに腰掛けて、紅茶を喫しながら顎を引いた。
「年頃の女の子も大変なのねえ」
「……まあね。気にしてないから、いいけど」
凛子がそういうと、岡田がまた綺麗な顔で笑った。そうしていると、本当に女が笑っているみたい、と凛子は思った。
亜麻色の髪を一つに結わえた岡田が、くすと声を漏らす。
「そうなのねえ。ところで、最近体は変わったところ、ない? 眩暈がするとか、具合が悪いとか」
「……そんなのいつも」
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