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少し目線を上げれば映るのは緑の葉。
花びらはとっくに散っている。
それはそうだろう。もう5月下旬になる。
今頃咲いているのはここよりずっと北の方。
当然のことだけど桜は動けない。
根を張ったらそこで枯れるまで居続ける。
この木はここで何回季節を経験しているのだろう?
私のような気持ちの子も、きっと沢山見てきたんだと思う。
「なんかマイナス思考になりすぎた・・・」
木から離れて足元の通学鞄をとる。
小さい鞄。中身は教科書とノートとペンケースにスマホ、それだけ。
それしか持ち物がないからこの大きさで十分足りる。
重さもめちゃくちゃ軽い。きっとこれは普通。
「アンタ、大丈夫?」
声と同時に自転車のブレーキがかかる音がした。
その自転車の持ち主はうちの制服を着ている。
ここを通学路にしている生徒もいるから人がいることに驚きはしないけど、
声をかけられたことに関しては驚いた。
よく見ず知らずの他人、しかも女子相手に声をかけられたものだ。
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