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「あはは、悪い笑って。大丈夫ならいいんだ。
あと泣きそうじゃないのもいいこと、かな」
「私そんなに変だった?」
「変というか・・・あのままだったら、マジで泣きそうだったから。
泣いてる女の子見逃して帰れないじゃん」
そういって彼は私がしていたように桜の木に寄りかかった。
目を瞑ってなにか考えてるのか、とりあえず不思議な光景と言っておこう。
「さっきアンタ、て言ったけど本当は名前知ってるよ」
「そうだろうね、うちの生徒なら知っててもおかしくない」
「小山里佳子、朝礼真面目に出てるから覚えた」
私の名前を覚えた人は朝礼に出ているか、校内新聞に興味がある人。
朝礼では校長から何度も表彰状をもらい、新聞には写真とコメントが多く載っていた。
ただそれはこの桜が満開だった頃までの話。
それまで私は陸上部に所属して高校女子短距離の記録を更新していた。
この学校に進学したのだって中学の大会に出ていたとき高校のコーチがスカウトしたから。
走るのが好きで、厳しい練習は嬉しいくらいだった。
厳しさに勝てば試合でも結果を残せる。
伸び悩むタイムの時だって諦めず努力し続ければ必ず報われた。
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