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スパイクと陸上部ジャージ入りの大きなスポーツバッグは重たかったけど、 重さを気にしたことはなかった。 私のすべてが、あのバッグに込めてあったから。 「あーあ、また泣きそうになってる。いっそ泣いちゃいなよ、楽になるんじゃない?」 「もう、一生分流したから」 今度は頬を触って確かめなかった。 私にはもう流す涙はない。 診察室と自分の部屋で一生、いや来世の分も泣きつくした。 だから例えた泣きそうでも、涙がこぼれるなんてはずがないんだ。 「小山さんみたいに打ち込めるものがある人は、それを失ったときの代償は大きい」 スカートから伸びる脚を見た。 何度も、何度も見た手術の痕がある。 あれは事故だった。 桜が満開を少し過ぎて、雨が降っていた日のこと。 交差点で信号を待っていた私に一台の乗用車が雨でブレーキが思うように利かなくて突っ込んできた。 一瞬のことだったけど辛うじてよけた私は死ぬことはなかった。
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