2015.1.16 5:43

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 あれから半日、オレは執拗に取引を繰り返した。  まず、根幹となるポジションを除いて、全ての空売り分を反対売買で決済。これだけでも、周囲の席から称賛と妬み交じりの拍手が上がった。  やがて、急激過ぎる変動に自律反発を示す相場。レートの小刻みな上下動を捉えて、ダメ押しの取引を繰り返す。  ディーラーには数年に一度、何をどうやっても勝ってしまう日があると言うが、この日のオレがまさにそうだった。それしか芸のない猿回しの猿みたいに、血走った目で瞬きをする間も惜しみながら。  端末のキーボードを壊れんばかりに叩くたびに、百万円単位の利鞘(りざや)が上積みされていく。  ふと周囲を見渡すと、荒い値動きを嫌って大半のディーラーが相場を離れ、フロアは閑散としていた。  そろそろ、潮時ということか。そう言えば年始以来、自宅には帰っていない。  滞在先はディーリングルームから僅か数百メートルのホテル。ベッドメイクされたシーツの硬く冷えた感触が思い出されて、いてもたってもいられなくなった。
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