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家賃催促の紙でヒコーキを飛ばした。もう3ヶ月払ってない。
ここに住んでるってことはその日食うものもままならないってワケなのに、もうちょっと寛大でいてほしいもんだ。
乞食と空き缶を蹴っ飛ばして仕事場に向かう。
タイムカードを切る。バックヤードはむせ返るような安物香水の匂い。地球産はもっと上等な匂いだったんだろうね。
仕事着ーキャバクラのボーイに相応しい格好に着替え、一人の嬢に挨拶を。
「ナナお疲れ様。いい夜だね」
「毎度言うけどここに昼も夜もないわ。で、まともな通信機買えたの?」
ナナ。僕の同僚。金星からの出稼ぎ。
「ライカからタバコ買ってすっからかん。家賃も払えてない」
「バカ。そんなんじゃ千年かかっても地球の土は踏めないわ」
ナナは安っぽいドレスをはためかせながら僕に近づき、腕を絡ませ猫撫で声で言う。
「…ねえいい加減あきらめなよ。それよりあたしとさ…今晩空いてる?」
「…考えとくから。だから離れて」
オーナーがこちらへ来る。見られたな。長い夜の始
まり。
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