2人が本棚に入れています
本棚に追加
小学6年生にとっての冬休みは短いもので、年が明けてしまうともう学校だし、何より小学校最後の長期休みだ。というほど、冬休みは長くないけれど。
何より外は寒いし、雪なんて降ると余計に足が鈍る。雪で喜ぶのは犬と男子くらいだ。家でぬくぬくと籠りっぱなしのあたしからすると非常にバカらしい限りである。いや、まぁ夏でも同様の理由で引きこもってるけど。
なので今年も悠々と家に引きこもり、すでに数回クリアしているRPGをまた別ルートで進もうと段取りしていたのだが、
「あーおーいー、最後の冬休みなんだしさぁ、ゲームばっかしてないで遊ぼーよー」
冬休み前にそんな声をかけられた。声をかけてきたのは低学年から仲の良いアヤだ。当然あたしの返事は、
「えー、寒いしやだ」
だったのだが、アヤは引かない。
「なんでよー!せっかく最後なのにー!」
「最後とか別に関係ないじゃん。どうせ中学も一緒だし」
「小学校最後ってのがいいんじゃん!思い出作りだよ、思い出作り」
「あー、もう六年間で充分過ぎるくらいの思い出できたんで、もう胸いっぱい」
「あんたの思い出ってセーブデータでしょ」
「何故わかった」
「また懲りずにあのクソゲーするんでしょ」
「何故知っている。てかさりげなく批判するな貴様」
「いいから1日くらい時間ちょうだいクソオタク」
結局押しに弱いあたしは友人の誘いを断りきれず、アヤの家で何人かで集まって遊ぶことになった。
アヤの家でで集まることは多々あって、週末になると不思議と色んな人が集まる。違うクラスのあまり話したことのない人だったり、男女関係なく混じって遊ぶのだ。
なかなか不思議な空間だなあ、と思いながらいつも対戦ゲームでみんなをフルボッコにしたりするので、当然ブーイングが飛んでくる。
あれ、結局ゲームしてるじゃん。いや、でも家でするのは一人用だからね。みんなで楽しめていいじゃない。ブーイング止まないけど。しかし負けず嫌いなので手は抜かない。
やがて冬休みに入り、約束の日になったので寒さに震えながらアヤの家に向かっていたのだが、
「あれ、日向じゃん」
「げっ」
聞きたくない声が背後からしたが、振り返りはしない。だってきっと良いことないしね、うん。
最初のコメントを投稿しよう!