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しかし声は追ってくる。
「おいこら、無視すんな。てか今「げっ」って言ったろこら」
「い、言ってないってー。きっと蛙だよ、蛙」
「蛙は冬眠の時期だバカ野郎」
「ですよね」
諦めて振り返ると、そこには思った通りの男子――黒田がいた。
いつものジャージ姿にいつもの真っ黒な帽子を被った黒田は、自転車であたしの隣まで来ると、途端に睨み付けてきた。
「なんで無視しようとすんだよ」
「や、やだなー人聞きの悪い。ちょっと耳が遠いだけだって」
「明らかに、げって言ったけどな」
「あれはその、ほら、お昼ご飯いっぱい食べたから口からガスが出たんですな」
「お前それでも女かよ」
「痛いとこ突いてくるなあ!」
ほんと、やめてほしい。女子力ないのは自業自得だけど。
まぁいいや、と黒田は自転車を降りて、あたしの隣を自転車を押しながら歩き始めた。もしや、とまたまた嫌な予感。
「もしかしなくても、黒田もアヤの家に行くの……?」
「そうだけど、なんでそんな不安そうな顔すんだよ」
「いやぁ、黒田がいると邪魔……げふがふごほ。あれ、急に喉が」
「咳が不自然。あと腹を抑えながら言うな。そして邪魔ってなんだおい」
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