第1章

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曲はいつの間にかジャズ調のファランドールになっていた。 「でも…実はカルメンはアキなんだよね。 」 ん? とマスターが理央に向き直る。 「俺もマスターもさ、 さっきの 「こんなピアノに興味ない」 って言い方にムカついてただけなんだよね。 」 マスターが珍しくニヤリと笑った。 ちょっと怖いほどの色気を漂わせる表情に、  『それは秘密だよ。 』 と言われたような気がして、 理央は少し背筋に寒いものを感じた。 理央がもう一杯おかわりを頼み、 店内にいつものざわめきが戻ってきた頃。 鼻先にふわりと夜の街の匂いがして、 誰かがドアを開けたのかと何気なく見ると、 そこにマサが立っていた。
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