第1章

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「それは。 どっちもだけど、 弾き手の技術とセンスのほうが大きいかな。 ね? マスター。 」 マサのほうを向いてマスターが微笑みながら控えめに頷く。 「へぇ…。 凄いんだねぇ、 彼。 」 「うん。 」 大手商社の営業マンで、 年中海外を飛び回って大きな商談をモノにしてくる男が、 最近重責な仕事を任されるようになったと言って、 数ヶ国語を巧みに操り自宅からも各地に電話してるこの男が、 アキのピアノに目を潤ませている。 「お前だって…凄いのに。 」 鼻にかけたイヤミな男になってもおかしくないのに、 どうしてこんな純粋でいられるのだろう。
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