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川沿いを榊と歩きながら
子が探しそうな物がないかと聞いてみる。
「この山で探しそうな物か。特には思い当たらぬが... 」
榊は立ち止まり、秋の虫の声の中
蕭々とした川の流れを見つめながら
「先に生まれた二匹の子は、宝珠を持っておらなんだ」と呟いた。
「あ? どういうことだ?
まだ妖狐じゃないからか?」
「それでも、元になる珠はあるはずなのじゃが
子等にはなかった。もちろん術も使わなんだ。
呪い子である故、そういったこともあろうと思うておったのだが...
だが、四つ眼の子については、どうであっただろう?
口から抜けたという魂魄以外に、白い珠のようなものは見たか?」
「いや。白い靄以外は 何も見なかったぜ。
まだ宝珠が無かったんじゃないのか?」
「しかし身を隠すためには術を使わぬことには...
里におる時は隠れることはなかったのじゃが」
なら、この山に入ると見えなくなったのか。
「結界を張っているってことは?」
「いや。結界は場に張るものだ。
子が結界の内に隠れておるならば、泰河や朋樹にも姿は見えぬ」
また榊と歩くが、川沿いの見える範囲には獣女も何もいない。
キャンプ場からは少し離れたようだが、左側の林の向こうに、山の道路の外灯が見える。
オレと榊は 林に入った。
一度 あの外灯の道路まで出て、そこからまた 今いる川の方とは逆の森に入ることにする。
「見つからねぇなぁ... 」
「うむ。山を降りてはおらぬと思うがのう」
林を抜け、道路まで出たが何もいない。
あの獣女にも、身体には白い獣毛が生えていた。
身体つきは 成人女性くらいはあった。
外灯のない森の中でも、近くにいるのなら
月明かりで 十分見つけられそうなもんだが...
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