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事務所のドアをノックすると、おっさんが顔を覗かせた。 「おはよう」と笑顔で挨拶したおっさんは すぐに、ん? という顔になり 「もしかして、解決したの?」と聞く。 「はい、まあ だいたいは」 オレが答えると、おっさんは驚いてあたふたし出し、どこかに電話を掛け始めた。 「あのね、所長が来るって言ってるから」 短い通話を終えたおっさんがオレに言う。 「わかりました。雨宮が到着したら仕上げに入るんで、所長さんと立ち合ってくださいね。 広場の奥の、右隅の方です」 事務所から出ようとすると、おっさんが 「あっ、梶谷くん」と呼び止めた。 オレが振り向くと 「あの、何だったのかな? ここに出るっていう噂の、その...」と、怖々と聞いてくる。 うーん... なんと答えたことか... 「四つ足で走る女だったんすけど...」 「いや! やっぱりいいや!」 おっさんは自分の胸の前で、ぶんぶんと こっちに向けた手のひらを振る。 「んー... まあ まだ埋葬途中なんで、後で見れますよ」 オレが そう言い残すと、おっさんは 「ええっ?!」と、顔を青くした。
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