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******** 「わっ、すげぇな」 穴の中の獣女を見て、朋樹は声を上げた。 獣女は、さっきの穴に収められた状態で 薄く開けた四つの眼を空に向け、口からは だらりと舌を出している。 「なんなんだ、これ?」 「知らね」 軽く答えたオレに 朋樹はため息をつき 「相変わらず いいかげんだよな、おまえ。 ま、いいわ。清めた後に祠でも建ててもらうかな」と、また獣女を見た。 「梶谷くん」と、おっさんが誰かと 一緒に、事務所の方から向かって来るのが見えた。 よく見るタイプのごく薄いベージュっぽい色の作業着上下のおっさんは、キャンプ場の所長らしい。そういや、初日にちらっと挨拶した人だ。 「おはようございます。 いやどうも、梶谷さん、雨宮さん。 解決してくださったようで...」 所長おっさんはハンカチを出して、オールバックの額に滲んだ汗を拭いた。 「それで、その遺体があると...」 オレが背後の穴を「そこです」と親指で指し示すと、所長おっさんと事務所のおっさんは恐る恐る穴に近づく。 「ィッ...ヒィイィィッ!」 穴を覗くと、事務所のおっさんが 喉から声にならない声を絞り出して後ろに転び、所長おっさんも 口をパクパクさせて腰を抜かした。 「大丈夫ですか?」 朋樹が おっさん二人の背を手で軽くさする。 失神寸前だったおっさん達が落ち着いてくると、これから朋樹が『祭詩を奏上する』と言う。 簡単にではあるが、獣女の葬式のようなものをするらしい。 朋樹は、かしこまった おっさん達と オレを背後に従え、獣女の胸の札を外し、それをオレに渡すと 祝詞を捧げ出した。
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