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じゃあ、目撃された子は違うな。
見掛けた人が 普通に声をかけるくらいだ。
実際の身体を伴っている。
もし、後ろに座ってるこの子を見たなら、霊だと思うはずだしな。
この子の姿をした別の何かが居るってことか...
オレらは、主にそっちの調査らしい。
「ユズハちゃんは 亡くなったショックで話したくないみたいなんだ。どうやら、殺られてるしな。
昨日話してみたけど、無理だった」
「朋樹! おまえ、そういう言葉 遣うなよ」
「ん? 何が?
オレも 一応霊視したんだけどさ、相手の顔までは視えなかったんだよな。暗闇だった」
朋樹は これから、沙耶ちゃんの店にユズハちゃんを連れて行くという。
沙耶ちゃんに 直接ユズハちゃんを視てもらって
何があったのかとか、遺体の場所の特定だとか
情報を得るために。
しかし...
オレはもう一度、車内ミラーで ユズハちゃんを見た。ごく普通の女の子だ。
たぶん、笑えば かわいいんだろうな。
まだ16歳なのに...
「あんまり長く迷っても良くないしな。
はっきりさせないと。ご家族のためにも、な」
朋樹が言うと、ユズハちゃんは微かに俯いた。
調査は夜からってことで、オレは 一度仮眠を取ることにして、自宅マンションの前で車を降りた。
一晩寝てないこともあり、もう なんか疲れで
頭の中だけじゃなく身体までふわふわするし。
夜、朋樹が また迎えに来るというので
車は そのまま貸しておいた。
家に何か食いもんあったっけ? とか考えながら、外の扉のオートロックを解除していると
背後を何かの動物が走っていく。
走り去った足音の方向を見ると、太くて先の白い尾の後ろ姿が見えた。
狐だ。
昨夜遊歩道から見た、向かいの山の赤オレンジの灯りの行列をふと思い出す。
やっぱり この辺りにもいるんだなぁ。
ここら辺じゃ初めて見たけど...
もう何度目かのあくびをしながらエレベーターに乗って、四日ぶりに自分の部屋へ帰った。
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