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「まず視えたのは、展望台だったわ」 今の時間は 20時くらい。 オレらは沙耶ちゃんの店にいる。 結構寝たので 頭はすっきりし、疲れも割りと取れたが、部屋の冷蔵庫は ほぼ空っぽだった。 とにかく腹が減ったので、朋樹に迎えに来てもらって ここで飯を食い、今は食後のコーヒーを飲んでいる。 白いレンガの壁の店内には、明るいが眩しくはない照明の下に、様々な観葉植物の緑がよく映える。 いつもオレらが座るカウンターの奥には この店に不似合いな手書きのボード “占い、御祓い等承ります。どうぞお気軽に” ってやつが掛けてある。 不似合いなので、店に入れば必ず目に入る。 沙耶ちゃん... 如月 沙耶夏は 一人で この占いカフェをやっている。 沙耶ちゃん、と呼んでいるが たぶん 27歳のオレらよりちょっと年上。 華奢で小さく、幼い顔立ちのせいで とてもそうは見えないが。 肩の上で揺れる柔らかなウェーブの毛先や 二重瞼の大きな眼、ナチュラルな色のグロス。 可憐、という言葉が似合う人だ。 沙耶ちゃんは視える人で、霊視も出来る。 朋樹も多少は出来るが、対象のごく限られたことだ。沙耶ちゃんは遠隔も出来、精度も高い。
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