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沙耶ちゃんが遮ったが、朋樹は多分また 被害者のユズハちゃんを気にかけないようなことを言おうとしたようだ。 誰かに殺害されたのなら、その時のことを聞けば 依頼の解決も早いかもしれない。 だがユズハちゃんは、何かの理由で口を閉ざしている。 今までの朋樹の口ぶりから、ユズハちゃんは どうやら誰かに首を絞められたようだ。 朋樹の霊視は、その人が見た場面が視えるようなこともあるようだが、追体験することが多い。 悪夢のような霊視の仕方だと、いつも思う。 被害者の視点であっても、加害者の視点であっても、本人と同じ視点で視るようだ。 対して、沙耶ちゃんは 第三者として視る。 被害者の視点にも加害者の視点にもならないらしい。 もし本人がその時のこと...亡くなった時のことを 覚えていないのなら 沙耶ちゃんには、それがわかる。 記憶が途切れたところが視えるから。 ユズハちゃんは覚えていて、口を閉ざしている。 聞かれたくないことが何かあるんだ。 沙耶ちゃんは、本人が視られたくないと意志を持って隠しているものは視ない。 占いや霊視をする上で、相手の心を尊重する。 ましてや、ユズハちゃんは若い女の子だ。 特に気を使う必要があるんじゃないかと思う。 それに、事件自体を解決するのはオレらの仕事じゃない。 依頼内容は、ユズハちゃんを捜すことだ。 そして周囲で見掛けられるという、もう一人の 実体を持ったユズハちゃんの調査。 もしそれが事件解決にも繋がるとしても ユズハちゃんが知られたくないことは、オレらが知る必要はない。 朋樹は、イヤなヤツではない。 どちらかと言えば 他人には親切な方だ。 でも、そういうことに気を回さない。 朋樹が沙耶ちゃんのように霊視が出来るのなら 何もかも視て、本人に確認するだろう。 例えばだが、“犯されて殺された?”とか “拷問の仕方は... ” とか、本人に平気で聞く。 何より解決を早めることが相手にとっても良いと考える。考え方は正しいのかもしれないが...
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