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あれから 干からびた死骸に、掘った土をかけて埋葬し 朋樹は、おっさん達に祠を建てて祀るよう指示していた。 「祠が建ちましたら、また呼んでください」 そう言って、霊璽(れいじ)という 仏教で言えば位牌にあたるものを、所長おっさんに渡している。祠が建つまで事務所で保管してもらうようだ。 霊璽には「白尾比売命」と書いてあった。 ハクビヒメノミコト 白い尾 って、そのままじゃねぇか... 四つ眼じゃないだけマシかもしれねぇが、見た目で簡単に名前をつけたらしい。 「ハクビ様は幽世(かくりよ)におられます。 このキャンプ場を守護されることでしょう」 おっさん達は青ざめたまま コクコク頷き、オレらは謝礼を受け取って事務所を出た。 とりあえず、この仕事は終了だ。 キャンプ場の駐車場で、朋樹から車の鍵を受け取って 運転席に乗り込む。 ここには初日から オレの車で来ていて 昨日 朋樹が呼び出された時に、この車で山から降りていたので、そのまま また乗って来てもらっていた。 「思ったより 早く終わったよな」 車で山道を下りながら、あくび混じりにオレが言うと、朋樹は「そうだな」と答え 「それで、あれは何だったんだろうな」と さっきの獣女のことを気にしている。 まあ、オレも気にはなる。 人型の獣。見たことがないヤツだ。 やけにあっさりと片付いたのも引っ掛かるとこだった。 まさか陀羅尼で死ぬとは思ってなかったし。 だが今は疲れて、早く帰って寝たかった。 寝てないこともあるが、でかい墓穴掘ったりしたし。疲れた、本当に。 「さあなぁ... 朋樹、おまえの方は? 何の仕事だった?」 また ふああ と、あくびしながら聞くと 朋樹は「人捜しなんだよな」と 肩にかかる長さの黒髪を軽くかきあげた。
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