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自室を出て、廊下から階下の様子を伺う。母は買い物にでも行っているのか、物音一つ響いてこない。
どんなに慎重に足を下ろしても軋む階段を下りる。
一階は廊下の電球が機能しておらず、玄関の欄間部からの力ない外光が辛うじて差し込んでいる。
外は風すらないのだろう。全てが停滞しているようだ。
居間への引き戸に手をかける。
日曜日のこの時間、いつもなら居間では父がテレビを観ているはずだ。
しかし、戸の向こうは静まり返っていて、人がいるのかさえ判然としない。
戸を開くと、父はすでに半身を飲み込まれていた。呼吸は止まっており、やけに静かなのはそのせいかと得心する。
私は無感動に、父を飲み込んでいる物に近づいた。
そういえば、こいつに前後はあるのかしらんと、どうでもいいことが気になった。
めくり上げて内部を露出させると、体を赤く染め、四肢をだらしなく投げ出して横たわる愛猫の姿があった。
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