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「猫は丸くなるんじゃないのか」
私が独り言を呟くと愛猫はパチリと目を開き、「さっさと失せろ。暖気が逃げるだろ」とでも言うように一睨みきかせてきた。赤い光の下で目が光っているのがまた恐ろしい。
布団を下ろすと、父が「ぷはあぁぁぁぁ!!!」と未知の力を覚醒させたかのような叫び声を上げて覚醒した。
「お父さん、また息してなかったよ。病院行きなよ」
父はぜえぜえ言いながら「無呼吸症候群って何科に行けばいいんだろうな」と呟く。
玄関のほうから物音がして、「ただいま」の声とともに居間の戸が開かれた。
「おお、こたつを出したかい。今日は雪でもちらつきそうな寒さだったよ」
祖母は日課の散歩から帰ってくるなり、機敏にこたつへ潜り込んだ。
「いけないねぇ。あたしはこいつに入ると出れなくなるってのに」
あの雪の帰り道も、祖母は仰々しくこたつの恐ろしさを語っていた。
子供ながらに、こういう大人にはならないようにしようと決意したのを思い出す。
「そういえば、玄関の電球が切れていたけど、また『アイツ』にイタズラでもされたのかねぇ」
寒気とは違う薄ら寒さを感じ、私もさっさとこたつへ逃げ込む。
電球の交換は、買い物から戻った母にやってもらうことにしよう。こいつに一度飲み込まれてしまえば、人は抗うことができないのだから。
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