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 富士山は今日も綺麗だ。山頂は真白(ましろ)な雪化粧、麓は空の色を吸い込んだような(あお)。  その富士山を、ぼく宇田川(うだがわ)さとしは「天女の伝説」の残る三宝(みほう)の松原の海岸から眺めていた。  時刻はもう少しで午前8時28分になる。今日の午前の満潮は8時42分。打ち寄せる波は少しづつ砂を崩しながら浜を飲み込んでいく。  砂地と小さな砂利の入り混じる砂浜には、ぼく以外にも人がいる。海外からの観光客だろうか、少し離れた場所で、中国語を話す団体が松林と富士山をバックに記念写真を撮っている。  ほかにも犬を連れたおじいさんが落ちている小枝を投げて犬に運動させていたり、その様子を見ているお母さんと娘さんの親子。潮風から守るために、お母さんは娘さんに自分の上着を着せている。  親子と目が合って軽くお辞儀をしたところで、ぼくのタブレットのアラームが鳴った。画面には【幽霊接近中】の文字。  ふざけたゲームの通知みたいだけど、ぼくがここにいる理由はこの通知を待っていたからなんだ。
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