幸せの定義

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月曜日の仕事は本当に憂鬱だった。 靴を履くのに10分ぐらいかかってしまう。 私の職場は男性があまりいなく、女性の割合が多いのだ。 3倍はいるだろうか。 男性の肩身は狭くなる一方だ。 仕事から帰ると、BGM程度にテレビをつけコンビニで買った今日の晩御飯を袋からテーブルに…。 「…ビンにお金があるじゃん。ほんとだったのかよ。」 つい買ったことさえ忘れていた悪口型貯金箱に数枚の100円玉が貯まっていた。 正直に言えば、騙されたと思っていたのだ。 そんな都合よくお金が貯まるはずなどないと、買ったあとに思って後悔していた。 「お金が溜まっているということは、悪口か!」 悪口を言われたのだろうとすぐに分かったが、悪口を言われて嬉しいと感じたのは初めてだった。 もちろん当たり前だろう。 誰だって悪口は好きではないだろう。 言った本人はスッキリするかもしれないが、聞く方も言われる方も良い気持ちはしない。 だがしかし、私は悪口を言われたことに嬉しさを感じている。 この商品が本物だと証明できたし、何よりお金がなんの苦労なしで貯まっているのは、なんというかこう…素晴らしい! 嬉しさのあまりコンビニで買った弁当をそのままにしてビンを眺めていた。 「ちゃりん」 その音と共にビンの上部から100円玉が落ちてきた。 また悪口を言われたようだ。 「すごい…。悪口かぁ。あぁ、そういう言えば川口さんたちは飲みに言ったらしいな。」 多分そのお酒の席で言ったのだろうと思ってビンを見ていた。 しばらくするとまた 「ちゃりん」 と100円玉が落ちる。 悪口を言われているのがこんなに清々しく思えるなんて、このビン案外、癒しの効果もあるんじゃないのか。 などと私は思ってしまうほどだった。
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