0人が本棚に入れています
本棚に追加
数日すると、貯金箱には3分の1ぐらいの100円玉が貯まっていた。
持ってみると少し重い。
「ちゃりん」
またビンにお金が入る。
悪口の代償が。
悪口のお金が入ってくるのだ。
私はだんだんとその音に敏感になってしまっていた。
最初の頃は嬉しくて興奮していたが、今となってはその音が不快でならない。
仕事から帰っても誰かがどこかで私の悪口を言っている。
このビンはそう私に教えてくる。
それが仕事が休まの土日でも休まることなく鳴るのだから、不快に思えてくるのだ。
お金が貯まれば貯まるほど、それだけの悪口が生まれてくる。
お金を使う気にも私はなれなかった。
一体誰だろう。どこで言っているのだろう。なにを言っているのだろう。
そう思うと気が気ではなくなっていた。
「もういい。鳴らないでくれ…。」
悪口型貯金箱は「ちゃりん」という音で今日もまた私の心のストレス箱を溜めてくる。
もうその箱は満タンに近いのだが、空っぽにする方法が私にはよく分からなかった。
悪口型貯金箱。
捨ててしまいたいが、捨てたら捨てたできっと私は気になってしまうのだろう。
貯まるお金はなんとなく汚く見えてしまう。
私の心の余裕は
「ちゃりん」
いっぱいいっぱいで鳴りやみそうにない。
最初のコメントを投稿しよう!