幸せの定義

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数日すると、貯金箱には3分の1ぐらいの100円玉が貯まっていた。 持ってみると少し重い。 「ちゃりん」 またビンにお金が入る。 悪口の代償が。 悪口のお金が入ってくるのだ。 私はだんだんとその音に敏感になってしまっていた。 最初の頃は嬉しくて興奮していたが、今となってはその音が不快でならない。 仕事から帰っても誰かがどこかで私の悪口を言っている。 このビンはそう私に教えてくる。 それが仕事が休まの土日でも休まることなく鳴るのだから、不快に思えてくるのだ。 お金が貯まれば貯まるほど、それだけの悪口が生まれてくる。 お金を使う気にも私はなれなかった。 一体誰だろう。どこで言っているのだろう。なにを言っているのだろう。 そう思うと気が気ではなくなっていた。 「もういい。鳴らないでくれ…。」 悪口型貯金箱は「ちゃりん」という音で今日もまた私の心のストレス箱を溜めてくる。 もうその箱は満タンに近いのだが、空っぽにする方法が私にはよく分からなかった。 悪口型貯金箱。 捨ててしまいたいが、捨てたら捨てたできっと私は気になってしまうのだろう。 貯まるお金はなんとなく汚く見えてしまう。 私の心の余裕は 「ちゃりん」 いっぱいいっぱいで鳴りやみそうにない。
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