卵焼きが食べたくて

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「俺はこの卵焼きを食べたかったの」 「卵に味つけて焼くだけよ?」 「いや、違うね」 俺は箸でもう一口分をつまむ。 「たしかに卵に味つけて焼くだけどさ……どうやってもこの味にならないし、たまに無性に食べたくなるんだよ」 もぐもぐ。俺は、うんうんと頷きながら卵焼きを味わった。 「もしかして、これ食べにわざわざ来たとか?」 母さんは笑いながら質問した。 俺は箸を置いた。 「半分正解かな。これを食べたかったのと、母さんの顔が見たかったんだよ…… ……さいごに」
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