第2章 封印した過去とグチ友

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 ボルダリングにもだいぶ慣れ、簡単なコースでなら、上まで登れるようになっていた。 心なしか体も引き締まってきたようだ。試しにロッカールームで体重計に乗ってみると2kgも体重が減っていて、思わず「ヨシ!」と呟いた。  その時、ガチャとドアが開いて、誰かが入ってきた。初心者講習で一緒だった、(せき) 晴美(はるみ)という、二十代前半の背の高い女性だ。 「お疲れさま」  私が挨拶したのに、晴美はチラッとこちらを見ただけで、何も言わない。 居心地の悪さを感じ、すぐに荷物をまとめて出て行こうとした。  すると、いきなり後ろから肩をつかまれ、引き戻された。勢いで、背中からロッカーにぶつかった私に、晴美が顔を近づけてくる。その目は敵意に満ちていた。 「なんですか?」  訳が分からず睨み返すと、 「子供使うなんて卑怯なことするなよ。おばさん」 晴美は低い声で脅すように言った。  察するに、晴美はカイリのことが好きで、私が薫花を通じてカイリと親しげに話すのが気に入らないということのようだ。この人も私を刺激を求めている欲求不満の主婦だと思っているのだろう、お門違いもいいところだ。  私は反論しようと口を開いたが、他の会員さんが部屋に入って来て、晴美はその隙にさっと出て行ってしまった。  うう、ムカつく……。  帰路についてもまだ、晴美に対しての怒りが収まらなかった。  大体、何を目的にジムにきているのだ。運動もろくにせず男漁りしている方がおかしいだろう。それに、おばさんって、晴美よりは年上かもしれないが、私だってギリギリまだ二十代だ。  頭の中で無駄に悪態をついていると、目の前を白い猫が横切り、公園に入って行った。  他にも数匹の猫がいて、まるで集会を開いているように見えた。私は猫じいの言葉を思い出した。  まさか本当に人間の噂話をしていたりしてね。 「〇〇家の旦那さんたら、不倫してるのよー」 「まあ、また?懲りないわねー」  私は猫の井戸端会議を妄想し、少し可笑しくなった。
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